夏の思い出
10月になり,峰キャンパス内を散策していると,サンショウの木の葉にしっかりと捕まっている1匹のセミの抜け殻を見つけました。9月の雨にも負けず,10月になった今でもしっかりしがみついています。すでに抜け殻の主(あるじ)はいないはずですが……。
暑かった8月,峰キャンパスでは朝からセミの声が響き渡り,キャンパス内の木々を見て回るとたくさんのセミの抜け殻を見つけることができました。峰キャンパスでは,大きな木が何本も植わっているのが一つの特徴でしたが,老朽化で倒木の危険性があるため何本も切り倒されています。しかし,セミはキャンパス内のあちこちで育ち,夏は次の世代を得るため腹のそこから鳴いており,まだ,自然が残っていること感じていました。9月になり急に涼しくなり,雨の降る日が多くなり,セミの鳴き声もいつしか聞こえなくなりました。10月になり,夕方に秋の虫の鳴き声が聞こえるようになりました。いたるところに見られたセミの抜け殻も雨に流されたのか少なくなっている中,しっかりと葉にしがみついているセミの抜け殻を見て,蒸し返すような暑い中でセミが大合唱している8月をふと思い出しました。
さて,理科の学習で初めて昆虫を扱うのは小学校3年生で,実際に昆虫を卵や幼虫から育てたり調べたりして,「昆虫の育ち方には一定の順序があること」や「成虫の体は頭、胸および腹からできていること」を学びます。さらに,昆虫の育ち方には,「卵→幼虫→蛹→成虫」や「卵→幼虫→成虫」のように,蛹の時期がある昆虫と蛹の時期がない昆虫がいることを学びます。ここで問題です。セミの抜け殻は,いったい何でしょうか。知っている人にはなんてことのない問題ですが,セミには蛹の時期がないため,蛹の殻ではありません。セミの殻は,成虫になる前の最後の幼虫(終齢幼虫といいます)から成虫が抜け出した抜け殻です。
何年も前に授業で学生にこの質問をした際に,予想以上に多くの学生が,セミの抜け殻は蛹の殻だと回答し,生物を専門としてきた著者が少々驚いたことを思い出します。現在は,授業の流れの中で,蛹の時期がある昆虫(チョウ,カブトムシなど)と,蛹の時期がない昆虫(カマキリ,トンボ,セミなど)をきちんと説明しています。また,蛹の時期がある昆虫は幼虫の姿と成虫の姿に非常に違いがある一方,蛹の時期がない昆虫は幼虫の姿と成虫の姿がよく似ていると,簡単な見分け方も説明しています(ただ,幼虫の姿と成虫の姿がイメージできないと役に立たない見分け方ですが)。
ここまで読んできて,セミの幼虫の姿を示すセミの抜け殻と成虫のセミの姿が本当に似ているか確かめたくなられたでしょうか。もう今年は調べることはできませんが,来年の夏,成虫を捕まえてセミの抜け殻と似ている点や似ていない点などを調べて見てください。チョウの幼虫と成虫の姿より,よっぽどセミは幼虫と成虫の姿が似ていることが分かるはずです。
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